April 16, 2010
海部美知 ”パラダイス鎖国”

パラダイス鎖国とは、他国とつながろうという力が弱まり、誰も強制せずとも住み心地のいい自国に自発的に閉じこもる国の状態である。 p.003, 004参照

本書、”パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本“は、日本がパラダイス鎖国に陥っている現状と原因を分析し、解決策を提示している。本レビューではパラダイス鎖国の詳細について説明する。

パラダイス鎖国になる以前では、ガンガンと世界に打って出ていた日本企業が多く存在した。著者が勤めていたホンダ技研工業も代表格であり、それらの企業は2つの公式を順守した経営が行われていた。

公式1 数の多いほうが勝ち

公式2 グローバル・ブランドの確立と維持

公式1は議論の余地のないほど明確なため説明は省略し、公式2を説明する。

ホンダでは、70年代に中南米等の年に数台のバイクが売れればよいほうと言える地域にも総代理店を持ち、ホンダの看板を島の隅々まで行き渡らせていた。泡沫市場を単独で考えれば明らかに採算割れであるが、世界の津々浦々まで統一ブランドを行き渡らせること自体が、ブランドの価値を高め、ほかより少々高くても商品を買ってもらえるというメカニズムを作り上げていた。これが公式2の意味である。 p.047参照

超高級品には当てはまらないが、日用雑貨から家電製品、自動車等の商品においては、公式2は公式1の土台があって成り立つ花であり、公式1が保持できなくなると公式2も保持できなくなる。コンピュータ、通信機器、デジタル家電分野全体では顕著に見られた現象である。 p.054参照

本書では日本が “進んでいる”(発展している)分野とそれ以外の分野の特徴を述べている。鉄道が便利になること、上下水道の整備、初等教育の普及等は進んでいる。なぜなら議論が分かれにくく、暗黙の合意が形成されやすいからである。逆に、金融政策、高等教育、映像の著作権の扱い方等は進んでいない。議論が分かれるからである。 p.074, 075参照

つまり、日本(の企業)は古い公式(パラダイム)を持って世界との競争に負けているが、世界との競争にダイレクトに関係する分野・テーマについて合意することがなかなかできず、力を集約させることができない。そのため、暗黙の合意ができる分野で日本国内だけで勝負して、やり繰りするのである。その結果がパラダイス鎖国なのである。

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